こんにちは。
私は東京を中心に「ASDグレーゾーンの交流会」を開催している「発達パートナーズ」の石田と申します。
今回は会でもよく話されるASDグレーゾーンの人のお仕事や適職について書いていきたいと思います。
実際にたくさんの参加者さんから伺ったお話をもとに記事にしていますので、ぜひ最後まで読んで参考にしていただければと思います。
はじめに
ASDグレーゾーンとは
ASD(自閉症スペクトラム)グレーゾーンとは、ASDの確定診断を受けていないがASDの特性が認められる人のことを指します。
具体的には、「病院は未受診だがASDかもしれないと疑われる人」や「受診したけれども傾向あり」と診断されるに留まった人です。
ASDグレーゾーンについてもっと知りたい
ASDグレーゾーンについてもっと知りたい方は先に下記の記事をお読みください。

ASDグレーゾーンに適職はある?
さて、ASDグレーゾーンの人は仕事に悩みを抱えやすいのではないでしょうか。
誰にでも仕事の悩みのひとつふたつはあるでしょうが、ASDグレーゾーンの人はASDの特性が少しだけあることで、特性の濃い人や無い人よりもむしろ悩みやすい性質を持っているとも言えます。
自分の出来ないポイントに気づいてしまい、迷惑を掛けているのではないかと気に病んだり、他者の機嫌に敏感になってしまうこともあるでしょう。
鈍感に突っぱねて自分を貫くことができたらどんなに気持ちが楽になるか。
そんなどっちつかずな性質を持つASDグレーゾーンの人に適職と呼べるものはあるのでしょうか?
以下で一緒にみていきましょう!
ASDの人に向いているとされるもの(一般論)
一般論として、ネットで調べたり本を読んだりしたらよく出てくる「ASDの人に向いていること」にはどのようなものがあるのでしょうか。
①ルーティンワーク
ASDの人は「予測可能なこと」を「繰り返し行う」ような作業が得意と言われています。
②興味のあることやそれを深掘れる仕事
ASDの人は興味が持てることには長時間没頭することができます。
それを活かせる仕事であれば長く続けられる可能性があります。
③コミュニケーションや社会的スキルをあまり必要としない仕事
ASDの人は伝え方や受け取り方の面で他者との間に齟齬が起きやすいです。
そのため、コミュニケーションが少ない仕事では成功しやすいとも言えます。
④細かい作業や黙々と取り組める作業
ASDの人は細かい部分によく気がつくと言われています。
また、一人で集中して作業することも得意です。
いかがでしょうか?
確定診断を受けるASDの人にはこれらのことが比較的当てはまっているのかも知れませんが、グレーゾーンの人にとっては、「そう思う」ところと「イマイチ当てはまらない」ところがあるのではないでしょうか。
ちなみに上記の①~④に当てはまる仕事の例としては「プログラマー」「研究者」「技術者(職人)」「データ入力」「グラフィックデザイナー」「動物トレーナー」「自然保護員」などが挙げられます。
ちょっと特殊過ぎて興味が湧かないものが多いのではないでしょうか?
ですのでここからはASDグレーゾーンの人の実態に合った適職の選び方を見ていきたいと思います。
ASDグレーゾーンの人の仕事選びのコツ
では実際に働いているASDグレーゾーンの人のはどんなことを仕事にしているかと言いますと、実は多岐にわたっており、会社員で一般クローズの人から、ASD以外の精神障害で手帳を持つ障害者雇用の人や、自営業の人までいます。
業種や職種も様々で、何かが多い少ないなど偏っているということはないでしょう。
ただ、安定して働き続けている人には、たまたま職場環境や人に恵まれたという場合を除いて、ある共通点が見えてきます。
それは「好きなことや出来ることをやり(もしくは増やし)、出来ないことはやらない仕事をしている」ということです。
つまり、以下3つが「仕事選びのコツ」です。
①好きなことから考える
②出来ることから考える
③出来ないこと、やりたくないことを外す
では、一つずつ詳しく見ていきましょう。
①好きなことから考える
当たり前ですが好きなことをやっていると楽しいですよね。
ASDの特性がある人は特に好きなことや興味のあることには人一倍熱中できて集中力が発揮できます。
それを仕事に出来たらどんなにいいかと誰もが一度は考えるのではないでしょうか。
でも「好きなことは好きなようにやるから楽しめるんだよ」「仕事にしたら楽しめない。嫌いになっちゃうかも」「好きなことを仕事にしようとしても、そのためには嫌なこともやらなきゃならない」などなどが頭に浮かび、好きなことを仕事にするのを諦めてしまう人も多いと思います。
しかしこれにはカラクリがあって、「ゲームが好きだからゲーム制作会社」「絵が好きだから絵描き」「食べ物が好きだから飲食店店員」といった単純な選び方ではなく、ゲームならゲームの何が好きかを深掘りして、「自分だけの好きポイント」を見つける必要があります。
一言でゲームが好きと言っても人によってポイントが違い、ストーリーが好きな人とバトルが好きな人では、同じゲームが好きだったとしても話が合わないかもしれません。
もしゲームの会社で働けたとしても、ストーリーが好きなのにストーリーのないゲームのプログラミングの仕事をしていたら、それはゲームが嫌いにもなりかねないことではないでしょうか。
好きを深掘りし、それを活かせる仕事は何なのか考えていくことが大事です。
ストーリーが好きなら脚本家や小説家、ストーリーを伝えられるライターやゲーム配信者が適職かもしれません。
私も子供のころ作文の授業が好きだったのを思い出し、こうしてブログを書くことを選びました。
②出来ることから考える
好きから考えて適職に就ければ申し分ないですが、内省や職種の考察、そして実際の求人探しと、ハードルはかなり高いかもしれません。
そこで2番目にお伝えするコツは「出来ることから考える」です。
これは今までの経験から導き出していく方法ですので、考える範囲がある程度定まっている分、やりやすいのではないでしょうか。
とはいえ「出来ることがないから今こうして適職に就いて悩んでいるんだよー」という人もいるかもしれません。
しかしここで言う出来ることとは「ある仕事が全て完璧に出来る」ということではありません。
今までの経験を振り返って、例えば「早起きの仕事」と「夜勤の仕事」どちらが「出来る」だろうか、と考えます。
これだけで世の中にたくさんある仕事の中からだいぶ絞り込むことができます。
もちろんこのどちらも苦手ならいわゆる普通の時間帯の仕事を選ぶことになります。
実際に夜勤が得意で業種や職種にこだわらず働いているASDグレーゾーンの知人がいますが、夜勤の後の休日に趣味を楽しんだりしていて、私は夜勤は絶対に無理なので、出来る出来ないは本当に人によるものだなと感じます。
また、出来ることを増やすことも重要です。
昨今はリスキリング(学び直し)という言葉がよく聞かれるようになりましたが、私はコミュニケーションの苦手さが原因で色々な失敗をしてきたので、コミュニケーションスキルを上げるためにコーチングを学びました。
それが交流会を主催するうえでも役に立っています。
ブログを書くことに関しても、「文章を書くのが好き=ブログが出来る」わけではなく、それに加えてブログサービスの利用方法をはじめとしたネット関連の知識なども身につけました。
これはあくまで私の例ですが、好きなことや出来ることをやるために必要な勉強をする、ということです。
③出来ないこと、やりたくないことを外す
最後に、「出来ないこと、やりたくないことを外す」ということですが、②の出来ることの反対なので先にも触れましたが、私は夜勤が出来ないので選択肢から除外します。一回の夜勤でその後の3日間体調が悪くなるのでこれは頑張るとか頑張らないの話ではないのだと言えます。
早起きは夜勤よりは出来ますが満員電車や1時間通勤はちょっときつい。
こういったことを整理すると、「出社時間が遅い、もしくはフレックスタイム制」「行きに空いている下り電車に乗れる勤務地」「徒歩、自転車圏内」「車通勤可」のところを選ぶことになります。
このように、出来ないことややりたくないことを外していくことで、仕事選びの的はだいぶ絞られます。
出来ないことややりたくないことを避けることに対して、逃げているように感じたり、そこに立ち向かって克服したいと感じる人もいると思いますが、自分にとって嫌なことが誰かにとっては嫌じゃなく、自分にとって嫌じゃないことが誰かにとっては嫌なこと、ということは頻繁にありますので、それはマッチングや振り分けの問題ですから、気にせず自分にとって心地の良い選択をするのが吉です。
まとめ
ここまで見てきて分かるように、適職とはいきなりボン!とひとつ現れるものではありません。
「好きなこと」「出来ること」「出来ないこと、やりたくないこと」を全て総合して自分自身を良く見つめ、ひとつひとつ判断していった先に自分だけの適職が見つかるのです。
ASDグレーゾーンの人に関しては特に「出来ないこと、やりたくないことを外す」ことが大切ではないかと個人的には感じます。
ASDグレーゾーンの人は、世の中の人が作った常識の上に乗って生きるには辛すぎる特性を持っていると思いますので、常識にとらわれ過ぎず、出来ないことを頑張るよりも好きなことに取り組んで楽しく生きてほしいと思います。
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